2018年 03月 07日 ( 1 )

いいものあげる

 

重松清さんの短編集『ロング・ロング・アゴ―』の最初の一篇。

なにか少しずつ読めるような、心に穏やかに響いてくるような

そんな文庫本を探していたんですけど、この裏表紙に書かれていた

―「こんなはずじゃなかった人生」に訪れた、小さな奇跡...―

という言葉に惹かれて購入してみました。

 

ということで、今日は『いいものあげる』。

小学生の女の子の世界が舞台だけれど、こういう雰囲気は大人の世界にもある...

なんて思いながら、私も苦手だなぁ...と、やや読みすすめることに

尻込みしてしまうような気分にもなりながら、「奇跡」を信じて読んでみました。

 

自分が行動することには、結果ということの他に、

心に感触として残る、後味というものがありますよね。

それはしかたのないこと、必然なのだと、頭では言い聞かせてみても

自分の中にある良心というのか、根付いている感性というのか

そういうものが、思考や感情と別のところで

ブレーキをかけさせたり、背中を押させたりすることがある...

と思うんです。

そして、その感性が、実はいちばんの葛藤や迷いや悩みの原因でもあり

いちばん自分を納得させられ、救ってくれるものとも思えます。

 

後味の悪さを払拭するためには、つらい感情に向き合わなきゃならない。

時には、言ってしまいたい不満なんかを、封印しなくちゃならないこともある。

でも、私自身のことを省みると、その時の溢れそうな想いを怺えるより

溢れだす想いを放出することで、悪くなる後味の方が、

後々残っていく、自分へのダメージが大きいような気がするんですよね。

 

小学生の女の子の暮らす世界にも「社会」があって

大人よりも純粋で不安な感情と向き合いながら、格闘しながら

過ごしているのだろうと思います。

大人の事情が、子供の生活に影響を与えていることは、多々あると思いますし、

たぶん、それらすべてをひっくるめて「社会」なのだろうと思います。

そんな中で、見い出されたり、育まれてくる自我というものが

その後の自分の生き方や考え方の指針になっていくのだろうと思います。

 

「いいものあげる」は、

少女たちの社会の中で、育まれていく感性の瞬間が描かれている

と感じる作品でした。

そして、彼女たちの頭を笑顔で撫でてあげたいなぁ~と、

彼女たちの中にある美しい光りに拍手を送りたくなるような...

そんな後味を私に与えてくれた作品でした。

 

 

 



 


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by sawaki-home | 2018-03-07 16:00 | book

Painting is poetry that is seen rather than felt, and poetry is painting that is felt rather than seen. [Leonardo da Vinci]


by sawaki
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